AIを活用して消費者の購買心理を分析する

使ってみる

AI技術は近年目覚ましい進化を遂げています。この発展は私たちの生活、仕事、そして社会全体に大きな影響を与えています。ここでは、AI技術を用いてマーケティング分野として消費者心理学における購買心理の分析を行っていきます。

マーケティングにおける消費者心理の不可欠性

消費者心理はマーケティングにおける非常に重要な分野です。消費者心理学とは、消費者の行動の背後にある心理的プロセスを研究する学問であり、消費者が商品やサービスを購入する際の行動、態度、意思決定プロセスを理解することが目的です。

この分野は、心理学や行動科学、マーケティングなどの知識を組み合わせて、消費者の購買プロセスにおける思考、感情、行動を分析することにより企業はより消費者を惹きつけるようなマーケティング活動を行うことができますよね。そして企業は消費者心理を網羅することで心理ロイヤリティやブランド・ロイヤリティを形成し、企業としてのブランド価値を高められます。

AIが消費者心理を理解できるのか?

消費者心理を理解することはマーケティングにおいて非常に大切でありますが、消費者1人1人の行動や心理を分析することは極めて困難ですよね、間違いなく。当たり前な話ですが、人はそれぞれ個性があって異なる価値観や経験であったり嗜好を持っていて、同じ製品やサービスに対しても反応が変わってきますよね。それに消費者の多くは自分の購買行動における心理的要因を気にしていませんし、この無意識な動向を手動で考えるのってかなりしんどくないですか?

そこでAI技術を使って完全な個人の理解は難しくとも消費者の購買心理についてペルソナ設定やヒューリスティックスなどを作り上げることで、行動パターンや傾向をある程度瞬時に把握することができます。そのためAIを活用することで従来よりも購買心理を心理学や行動科学の観点からは消費者の購買意欲を高められるようなマーケティングができるでしょう。ここからは実際にAIを動かしながらマーケティングとしてのAI技術の実用性や有用性について考えます。

AIを活用したAIDMAモデルを構築してみる

AIDMA(アイドマ)モデルとは消費者の購買行動プロセスを示す代表的なマーケティングモデルです。このモデルは、消費者が商品やサービスを認知してから購入に至るまでの態度変容による心理的プロセスを5つのステップに分けて説明します。

ステップ 1 2 3 4 5
消費者の態度Attention(注意)Interest(興味)Desire(欲求)Memory(記憶)Action(行動)
段階商品やサービスの存在を知る段階 商品やサービスに興味や関心を持つ段階商品を欲しいと思う段階購入意向を維持するために商品を記憶する段階実際に商品を購入する段階
課題点認知度を高める商品の有益情報を提供し興味を持たせる商品を生活の中にほしいと思わせる買いたいと思わせることで記憶に残るようにする買いたいとは思うが機会がないため機会提供をする
※近年AISASやAMTULなどの類似モデルも存在する。

これらの消費者の心理状態に合わせた適切なアプローチを立てることで顧客に対して関与度を高めていくことができますが、これらの態度変容によって行うべきアプローチをAIに考えてもらうことでビッグデータを迅速に処理しマーケティングプロセスにおける最適化や自動化を促し、マーケティング活動の効率向上が期待されます。今回編集者は新規事業立ち上げを例として以下のプロンプトをおなじみのPerplexity AIに投げかけてみました。

私たちの製品のプロモーション戦略を考えるために、AIDMAモデルを活用してください。以下の情報を基に、各ステージ(Attention, Interest, Desire, Memory, Action)での最適なアプローチを提案してください。

- 製品名: [製品名]
- 製品の特徴: [製品の主な特徴や利点]
- ターゲット顧客層: [ターゲット顧客の年齢層、性別、趣味、ライフスタイルなど]
- 競合製品: [競合製品名とその特徴]
- 現在のマーケットトレンド: [現在の業界トレンドや消費者の傾向]
- 過去のプロモーション事例: [過去に実施したプロモーションの成功例や失敗例]

各ステージにおいて、どのようなメッセージングやチャネルを使用すべきか、具体的なアイデアを提供してください。また、デジタルとオフラインの両方の戦略を考慮してください
編集者は普段あまり野菜を食べません…(笑)

製品名のダサさが半端ないのは置いておいて文字数が多いことも多かったからかチャネルやアイデアがかなり具体的に構築されてますね。しっかり要件も反映されており精度も悪くないです。また関連事項からも有効なマーケティング戦略の事例や差別化戦略についても検索をかけてくれるので包括的な調査を行えますね。いざ事業を行わなくても気になるマーケットの動向から何か案を作り出しプロンプトとして投げ込んでみてもおもしろい結果が得られるかもしれませんね。

所感

AIDMAモデル構築ということでしたが、個人的にはなかなかいい感じに出力しているように感じました。特にペルソナ設定を容易に行えるので設定を何度か変更してみることでアプローチ自体がガラリと変化するので様々な顧客に合った戦略を短期間で大幅に立てやすいですね。

実用性に関しては十分マーケティングとして活用していくことはできますが、AIDMAモデル自体が1920年代に提唱されているモデルなので、現代の消費者の購買行動であるインターネットなどのデジタル化を考慮するためにも新しいモデルとして前述したAISASとの併用は検討する必要がありますね。

AIによる感情分析を活用した口コミ調査の有用性

一般的にAIは人の心を感情的に理解し解析することはできませんが、テキスト、音声、表情などのデータ解析から感情を読み取ることができます。この技術は「感情認識AI」として知られており、顔の表情や声のトーンやテキストなどを分析して感情を推測しているのです。とりわけ口コミには感情が含まれており、企業にとって口コミ調査は必要不可欠とされています。口コミは第三者からの情報であるため、消費者は企業からの直接的な宣伝よりも信頼性が高いと感じる傾向があります。これは「ウィンザー効果」とも呼ばれており、当事者以外の第三者からの情報に信頼性を感じる心理が働くのです。そのため企業は口コミから商品開発やサービス改善のヒントを得たり、ターゲット顧客のニーズや欲求をより深く理解することやブランドイメージの向上や修正に活用することで企業としてのブランド・ロイヤリティを高めることができます。今回はAIDMA新規事業例を仮定して以下3つの口コミをAIに投げかけ感情分析と推測を行ってみました。

Aさん(ポジティブ):おうちde採れたてスープ野菜を試してみましたが、新鮮な野菜の風味がそのまま楽しめてとても美味しかったです!忙しい日でも簡単に健康的な食事が取れるので、毎日の食事に取り入れています。野菜嫌いな私でしたが、今では野菜が大好きです!

Bさん(ネガティブ):スープの味がかなり薄く感じました。もっと濃厚な味わいを期待していたので、とても残念です。また味がいまいちならまだしも価格も高く、配送が遅いため、スーパーで買った方がましです。

Cさん(中立的):おうちde採れたてスープ野菜は、健康を意識する人には良い選択肢だと思います。手軽に野菜を摂取できる点は便利ですが、味や値段に関しては各々意見が分かれるかもしれません。個人的には、もう少しバリエーションがあるともっと使いたくなりますね。

以下のプロンプトを投げかけてみます。

以下の顧客の口コミを分析し、消費者が当社の製品を使用する際に抱いている感情や心理を特定してください。
次の点に注意して分析してください:
感情を肯定的、否定的、中立的に分類する。
各感情の背後にある理由や背景を具体的に説明する。
消費者の潜在的なニーズや期待について考察する。
分析結果をもとに、製品改善のための提案を3つ提供する。
口コミの内容:
[ここに口コミを挿入]
Aさんの分析結果による推測:野菜に対する意識変化からAさんの態度変容によって新しい態度が形成されていることがわかる。また肯定的な感情から一定の真のロイヤリティを生み出している。またAさんのような潜在顧客を増やしていけるような改善案や提案が出力されており、肯定的な口コミを利用してハンドワゴン効果を高めていけるのではないか。
Bさんの分析結果による推測:Bさんにとって味覚が商品の品質や価値を判断する重要な基準となっていることがわかる。一般的においしいと感じた商品は、消費者にポジティブな印象を与え、再購入につながりやすくなるため味の調整は必要不可欠になる。またニーズや期待からBさんにとって自己表現をする手段として商品を利用する深層心理が働いていた可能性が高いため、早急な改善次第では中立的な立場の消費者に比べて潜在的顧客になる可能性が高い。
Cさんの分析結果による推測:中立的な口コミは3つの中でも1番分析に時間を要していた。おそらく単純な肯定や否定の二分法では捉えきれない微妙なニュアンスを含んでいるために起きてしまっている。Cさんはある程度の専門性や知識をもっているため認知的な関与が高いと考えられる。このような中立的な口コミは消費者のレベルが高い傾向にあるため詳細な製品情報の提供であったり顧客全体の購買意思決定における不確実性を検討していく必要がある。
所感

実際にプロンプトを投げかけてみたところ全体的にバイアスを回避できていますね。人間が一から分析を行ってしまうとどうしても自身の主観などを組み込んでしまいがちですが、AIを使うことで客観性が担保され信頼度が増しますね。各分析結果ごとに態度変容の要因や背景が明確化されていて改善点がわかりやすいのもいいですね。今回AIによる口コミ分析から購買心理を考えてみましたがSNSやインターネットが発展している現代において口コミは大切です。企業や事業が市場価値を高めていくためにもAI技術を用いた購買心理のデータ分析は企業にとって一定の有用性があるといえます

マーケティングとしてのAIの将来

AIを実際に動かして消費者心理学による購買心理の観点からマーケティングとしてAI技術を活用できるのか試行してみましたが、客観的なデータ分析に基づき個々のパーソナライズされた購買心理の分析は将来的にもより効率性を増しながら成長していきます。しかしながら、消費者1人1人の心にある感情を把握できるのは我々人間です。そのためマーケターはAIを補完的に活用しながらも直接消費者の生の声を製品やサービスに反映していくことが望ましいAI技術の使い方だと思います。